【ゴルフ】継続パットのルール化 グリーン上のスピードアップ

レッスン

各方面から不満の声

グリーン上でスピードアップ

スロープレーの被害はますます広がりつつある。何年か前にフィリピンのコースで出会った例にはビックリした。いまは改善されているがこの国のグリーンは大体芝 目がきつい。そのことを一番よく知っているキャディーがサービスのためまずお客より先に目を読む。 日傘片手にその様子を見ていたお客は「そろそろよかろう」というころ合いに、やおらグリーンに上がり、こんどは「人まかせにしておけぬ」とばかり入念な読みにふける。続いて二人は談合し合議が成立してからいざアドレスという段取りになる。 これは異常な例だが、どの国でもスロープレーの最大の原因はグリーン上にあり、ルールにまで影響を与えている。 問題の一つは旗の扱いである。パッティングの際、ボールを旗に当ててもよかった当時は、旗を抜いたり差したりで大変な時間を食った。50㎝のパットでもわざわざ旗を差す人までいた旗は当てて得するためのものではない。ホールが見えない人にホールの場所を知らせるのが旗本来の目的である。さらに旗を差したままホールからボールを拾うとカップのふちがひどく痛み他人が迷惑する。

ルール上、当ててもいい当時は旗を乱用することでルールの心を踏みにじり時間がかかったホールが痛んだりの弊害が起こった。そこで旗本来の目的に戻り、当てると課するというルールに戻った。(現在はピンを挿したままホールアウトできる)このいきさつはゲバ騒動を連想させる。学校内では許されるということで学間の府の心を踏みにじってあばれる結果、きびしい取り締まりの法律を呼ぶことになる。ルー ルの心を無視すればするほどルールは複雑になり、ゴルファー自身に返ってくる。

もう1つの問題は継続(コンティニュアス)パッティングである。古い米国のテレビの画面を見ると20㎝のパットでもマークしてから入れている。一般ゴルファーも猿真似をした結果、 同じクセがついてしまった。英国人はかなり悠長な性質だが、パッティングに関しては米国人より早い。短いパットは続けてどんどん片付けてしまうからである。

そこでホールアウトするまで続けて打たねばならない、という継続パットがルール化された。公式試合に適用されたのは1966年の全米オープンが初めてである。この時、時間をはかったら非常に好結果だった。全米に出場するほどのプロならロングパットのほとんどをホー ルに寄せることができるので、スピードアップは当然である。

しかしアベレージクラスはそううまくはいかない。たとえば最初のパットでなお3以上も 残したとする。そこでまた目を読み直して2パット目を続ける。同伴者はいらいらしながら待たされる。その他いろいろの理由で継続パットはかえって不便、という声が高まる。それでも、不便な点も多いがいくらかでも早いからベターだ、ということである。

不満の声はアベレージクラスからばかりではない。継続パットが初登場した全米オープン で、ビリー・キャスパー()が、最後の9ホールに、大差で先行するアーノルド・パーマー()を奇跡的に逆転したのは有名である。継続パットは好調な選手は一層好調に不調な選手はますますドロ沼に沈んでいく、という傾向を生む。立ち直る余裕がないからである。パーマ ーはこの継続パットの魔術に泣かされたわけだ。ニクラウス()らは「継続パットはプロの 場合、ショー的盛り上がりを薄める」などといろいろ文句をつけた。そこで米国プロゴルフ協会では別のルールで試合を行なう、という面倒なことにもなった。ルールは一つであることが理想だが。

かなり昔「旗は抜いた方がいい。短いパットは続けて入れてしまった方がいい。そうしないルール化されてしまう」と雑誌に書いたことがあったが、結局、その通りになってしまった。ゴルファーがルールの心を知り、短いパットはマークせずにどんどん片付けていたなら、継続パットのルール化はなかったかもしれないのである。

ルールは社会の変化につれて変わるものである。社会の質が悪ければルールもきびしくなり複雑化する。ルールの心をゴルファーが身につければ、それだけの報酬は必ず自分に返ってくるものと信ずる。

案の定、継続パットは短い命だった。この文を発表してから6か月目に米英そろって廃止を決定、1970年から日本でも廃止された。実際には思ったほどスピードアップに役立たず、 となれば存続の理由は何もなくなったからである。

主な関連ルール

*バッティングの順序

規則第20 遠い球を先にプレイ

規則第3526bグリーンで打順を誤る

規則第352dパットの省略

規則第353a ホールに近い球

* 旗竿

用語の定義12

付属規則 旗竿の寸法

規則第343ac旗竿に当たった球

新訂 スコアを縮める秘訣

ゴルフルールの心 金田武明

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